マニホールドブロックとは?油圧ユニットにおける役割と加工ポイント

マニホールドブロックは、油圧システムや空圧システムで欠かせない部品です。油圧機器における省スペース化と軽量化に対して、マニホールドブロックは大きく貢献しています。このようなマニホールドブロックですが、高精度加工とバリ除去等の加工ポイントがいくつかあります。
本記事では、マニホールドブロックの基本的な役割から、油圧システムでの重要性、マニホールドブロックの加工ポイント、そしてポンプ組立で得た技術的知見や量産対応力等の宮本製作所ならではのマニホールドブロック製造、実際に当社で製作した加工実績まで、まとめて解説します。
目次
- そもそもマニホールドとは?
- マニホールドの役割
- 油圧用と空圧用のマニホールドの違い
- マニホールドの種類:ブロック、配管、電磁弁、バルブ
- マニホールドブロックとは?
- 油圧ユニットにおけるマニホールドブロックの役割
- 油圧ユニットの最適化設計:軽量化とコンパクト化
- 鉄製とアルミ製のマニホールドブロックの違い
- アルミダイカスト製マニホールドブロックの利点
- マニホールドブロックの加工ポイント
- 当社だからこそ可能な特注マニホールドブロック製造
- マニホールドブロックの事例紹介
- マニホールドブロックのことなら宮本製作所にお任せください!
そもそもマニホールドとは?
マニホールド(英語表記:manifold)とは、もともと「多岐に分かれる」「多様な」という意味を持つ英単語です。そのため、機械や工学の分野においてマニホールドとは、複数の流体経路を一つにまとめたり、一つの経路から複数に分配したりするための部品を指します。
油圧や空圧の分野では、バルブやセンサーなどの機器を効率的に接続・制御するための集約ブロックや分岐装置として活用されます。特に油圧機器では「油圧マニホールド」や「油圧ブロック」などと呼ばれることもあります。
マニホールドの役割
マニホールドの主な役割は、以下の通りです:
- 配管数の削減による省スペース化
- 流体の漏れリスク低減
- 制御バルブやセンサーとの一体化で保守性向上
- 組立工数の削減とコストダウン
これにより、装置の設計がよりコンパクトで合理的になり、システム全体の効率向上に寄与します。
油圧用と空圧用のマニホールドの違い
油圧と空圧のマニホールドは、使用される圧力、素材、構造に明確な違いがあります。
項目 | 油圧用マニホールド | 空圧用マニホールド |
---|---|---|
作動圧力 | 高圧(~35MPa) | 低圧(~0.7MPa) |
材料選定 | 鋼、アルミ、ステンレスなど強度重視 | アルミ、樹脂など軽量重視 |
精度要件 | 高精度(バリ除去、シール性) | 中精度(コスト重視) |
使用目的 | 力の伝達・制御 | 開閉動作や保持制御 |
油圧用は高圧環境下でも耐えられるように設計され、より複雑かつ高精度な構造を必要とします。一方、空圧用は比較的低圧のため、軽量な素材や構造で簡素化される傾向があります。また、コストや設置性を重視する場面で選ばれることが多いです。ただし、その分だけ耐圧は弱くなるため、流路の径や残肉の厚さに注意が必要です。
マニホールドの種類:ブロック、配管、電磁弁、バルブ
マニホールドには、目的や構造によっていくつかの種類があります。
- マニホールドブロック: 金属の塊を加工して内部に流路を設けたものです。油圧や空圧部品を直接取り付けられ、最も省スペースで高精度な構成が可能です。
- 配管マニホールド: 配管を組み合わせて流路を構成する形式です。設計の自由度は高いですが、接続部が多くなるため、漏れや設置スペースの問題が発生しやすくなります。
- 電磁弁マニホールド: 複数のソレノイドバルブ(電磁弁)を一体的に接続する構造です。制御配線や空気供給源を共通化できるため、FA設備などの自動機に多く使用されています。
- マニホールドバルブ: 圧力制御弁や流量制御弁などの機械式バルブを集約した構造です。油圧回路において、複雑な動作を一つの構造体でまとめる際に採用されます。
マニホールドブロックとは?
マニホールドブロックとは、鉄やアルミダイカスト、ステンレスなどの金属ブロックの内部に、油圧や空圧の流路を形成し、外部に接続するためのポートが設置された部品のことです。
マニホールドブロックに油圧部品を取り付けることで、従来必要だった配管が不要になり、装置全体の省スペース化や軽量化に大きく寄与します。特に、限られたスペースでの機械配置が求められる場合、マニホールドブロックは油圧ホースや継手の使用を最小限に抑えることができるため、非常に有効です。
マニホールドブロックの形状は、通常、直方体の金属の内部に複雑な油路を形成し、各部品を接続して作動するよう設計されています。油圧ユニット機器の接続において、モジュラースタック弁や電磁弁などを組み合わせて使用することで、複数の油圧回路を一体化し、油圧装置全体を小型化・軽量化できるため、建設機械や農業機械、車両関連の機械に広く使用されています。
油圧ユニットにおけるマニホールドブロックの役割
油圧システムでは、ポンプ・流量制御弁・圧力制御弁・シリンダーなどの部品を接続して流体制御を行います。従来はこれらを個別配管でつないでいましたが、マニホールドブロックを使えば、ブロック内部で流路を完結できるため、配管数を大幅に削減できます。
これにより、
- スペースの最適化
- 配管作業の簡素化
- 油漏れリスクの低減
- 作業時間と設置コストの削減
といったメリットが得られます。
油圧ユニットの最適化設計:軽量化とコンパクト化
マニホールドブロックを使用することで、油圧ユニットシステムの設計はよりコンパクトかつシンプルになります。たとえば、油圧ポンプ、圧力制御弁、流量制御弁、シリンダーといった各油圧部品をマニホールドブロック内に配置することで、油圧流路が内部で形成されるため、外部配管を減らすことができ、作業時間と設置コストの削減につながります。これにより、油圧ユニット全体の作動効率が向上し、装置の信頼性も高まります。
また、油圧ユニットシステムの小型化と軽量化も大きなメリットです。車両や建設機械などの分野では、限られたスペースでの部品配置が求められますが、マニホールドブロックはこの要件を満たすのに最適な部品です。従来の配管マニホールドでは、各部品をつなぐために多くのスペースが必要でしたが、マニホールドブロックの使用により、システム全体のスペースを削減し、装置のコンパクト化が可能になります。
鉄製とアルミ製のマニホールドブロックの違い
マニホールドブロックには、鉄製とアルミ製で大きく材質が2種類ありますが、主に下記のような違いがあります。
比較項目 | 鉄製 | アルミ製 |
強度 | 高い | 十分だが鉄より劣る |
重量 | 重い | 約1/3と軽量 |
耐食性 | やや劣る | 優れている |
加工性 | やや劣る(硬い) | 良好(切削しやすい) |
主な用途 | 高圧用途、建機、農機、車両など、重量が問題にならない環境 | 車両、医療機器など軽量化が重要な分野 |
強度が必要な高負荷用途では鉄製が採用される一方、軽量化・耐食性・加工性のバランスを重視する場面ではアルミ製が採用されます。
アルミダイカスト製マニホールドブロックの利点
アルミダイカストは、マニホールドブロックの製造において非常に重要な素材です。その最大の特徴は、軽量化と強度のバランスを高いレベルで保てることです。特に、産業機械や車両関連の機器では、装置全体の軽量化が求められる場面が多いため、アルミ素材の使用は不可欠です。アルミニウムは、鉄と比較して耐食性があり、長期間にわたって信頼性を保つことができます。これにより、油圧システムにおいても高い耐久性が期待でき、外部環境に強い構造が実現されます。
アルミダイカストによるマニホールドブロックは、スチール製のブロックに比べ約1/3の軽量化が可能です。これにより、建設機械や農業機械、車両関連の機器において、燃費の向上や運搬・設置の効率化が図れます。特に、大型の油圧機器や移動式の機械においては、この軽量化のメリットが大きく、機械全体のパフォーマンス向上に直結します。
このように、アルミダイカスト製のマニホールドブロックは、従来の鉄製部品と比べて、軽量化と製造効率に優れているだけでなく、コスト削減や長寿命化にも貢献しています。これにより、産業機器や車両向けの油圧システムにおいては、最適な選択肢となっています。
マニホールドブロックの加工ポイント

マニホールドブロックでは、金属ブロックの内部に油圧回路を構成するため、大小のポート穴をつなぎ合わせて油路を形成します。このブロック内部の油路は複雑な設計が多く、精密な穴あけ加工や交差管理が不可欠です。油圧回路における各部品が正確に動作するためには、非常に細かな精度が求められ、その精度を保つための加工プロセスが重要です。
例えば、深穴・長穴加工はマニホールドブロックの製作でよく使用される手法ですが、穴の中で他の油路と交差することがあり、その交点で工具が摩耗するリスクがあります。そのため、適切な工具の選定や加工中に発生するバリの除去が品質を左右する要素となります。バリが残ったままの状態で使用されると、油圧システム内に異物が混入し、機器の動作不良や摩耗、さらには油漏れといった問題の原因になります。
また、バリ取りは特に重要な工程です。マニホールドブロック内でのバリは、油圧流路内に微細な異物が残ることで、油圧システム全体の性能を低下させ、フィルターの詰まりや弁の誤作動につながるリスクがあります。このため、加工の最後には必ず徹底的なバリ取り作業を行い、部品の仕上がりを確認することが必要です。
さらに、マニホールドブロックは試作段階から量産段階への移行時においても、加工精度を保つ必要があります。試作品では高精度が達成されても、量産段階になると精度が落ちるというトラブルを避けるためには、量産を見据えた専用ラインの設計や、品質管理体制の整備が重要です。これにより、少量生産から大量生産に至るまで、安定した品質のマニホールドブロックを提供することが可能になります。
使用する材料(ステンレス、アルミ、鉄など)の特性に応じた最適な加工技術を選定することも重要です。たとえば、アルミは軽量でありながらも切削が容易で、多くの場面で採用されています。部品の材質や使用条件に合わせて適切な加工方法を選ぶことで、より高い性能と耐久性を持つマニホールドブロックを作り出すことが可能になります。
当社だからこそ可能な特注マニホールドブロック製造
ポンプ組立で培ったマニホールドブロックに対するノウハウと技術力
宮本製作所は、長年にわたる油圧機器の加工経験を活かし、特にポンプの組立工程において得られた知見が豊富です。この経験から、マニホールドブロックに接続される油圧部品やシステム全体の要件を深く理解しており、顧客のニーズに応じた最適な提案が可能です。油圧部品の取り付け位置や、油圧部品の流路径、配管ルート、設定圧力などの条件を正確に理解した上で、適切な加工条件の設定を行います。これにより、お客様ごとに最適な特注マニホールドを製作し、システムの効率化や省スペース化に大きく貢献しています。
試作から量産までの柔軟な対応力
宮本製作所は、試作・開発段階から量産への移行まで、一貫した高品質な加工対応を提供しています。少量の試作品を手掛けた後、量産時に同じ精度を保つため、専用の生産ラインを設計することで、月間10万個の大量生産にも対応可能です。この柔軟な対応力により、試作品から量産品まで同一の精度を保ちつつ、効率的な製造を実現しています。
工程集約と工具内製化によるリードタイム短縮
宮本製作所の強みの一つは、バニシングリーマのような特殊工具の内製化です。加工プロセスにおいて最適なツールを自社で製作することで、工程ごとの工具交換が不要となり、生産リードタイムの短縮を可能にしています。また、工具の再研磨やカスタムツールの製造により、製造プロセス全体の効率化を実現し、最終的にコスト削減と納期短縮を両立しています。これにより、顧客に対して迅速でコスト効率の高いサービスを提供しています。
顧客に合わせた技術提案
宮本製作所では、ポンプや油圧機器の分野における深い技術的な知識に基づいた提案が可能です。たとえば、油圧システム全体の効率を向上させるために、特定の要件に適合したマニホールドブロックの設計・製造を行います。このようなカスタマイズされた技術提案により、顧客のニーズに応じた最適な解決策を提供し、装置の信頼性向上やコスト削減に寄与しています。
マニホールドブロックの加工から油圧ポンプのOEM組立まで一貫対応
宮本製作所では、マニホールドブロックの加工から始まり、油圧ポンプのOEM組立まで一貫して対応しています。産業用ポンプの組立専用工場を保有しており、大手メーカーから依頼を受けたポンプの組立・検査・梱包を行う体制を整えています。
当社の強みは、ポンプ部品の高精度加工と、それを支える専用ラインによる組立・検査の一貫対応にあります。特に、アルミダイカスト製のポンプケースや高剛性を必要とする部品の加工においては、ミクロン台の精度を実現する高度な技術を有しており、産業機器や自動化設備に使用されるポンプの高品質化を支えています。専任の技術者が組立から検査までを担当することで、品質管理を徹底しています。
マニホールドブロックの事例紹介
続いて、実際に当社で製作したマニホールドブロックの事例をご紹介いたします。
アルミダイカスト製 マニホールドブロック

この製品は、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法としてマシニングにて6面加工を行っております。
段付き穴が非常に高精度な製品となっておりますが、専用の特殊工具を社内で内製化し、同軸度や穴径を確保しながらの加工を行っている製品となっております。
医療機器用マニホールドブロック

こちらは、医療機器の油圧システムに使用されるマニホールドブロックです。材質はアルミダイカストA2000、サイズは80×80×80で、加工精度は同軸度・平行度・直角度を2/100に仕上げています。
マニホールドブロックで必要となる複数のポート穴は、ネジ部、シート面、座面などを多段で構成しており、油圧システムに接続するための厳しい精度要求に対応しています。また、4面に穴加工を施しており、そのうち1面にはサイズや形状が異なる4つのポートが設けられています。特に、穴の深さが最大70mmに及ぶ深穴加工については、当社オリジナルの自社製バニシングリーマを使用することで、精密な仕上げを実現しました。
産業機械用マニホールドブロック

こちらは、産業機械の油圧システムに使用されるマニホールドブロックです。材質はアルミダイカストA2000、サイズは120×80×50で、加工精度は同軸度・平行度・直角度を2/100に仕上げています。
本製品では、ネジ部、シート面、座面など多段構成の複数のポート穴を加工し、産業機械の厳しい精度要求に対応しています。6面に穴加工を施しており、そのうち2面にはサイズや形状が異なる3つのポートが設けられています。特に、最大75mmに及ぶ深穴加工については、当社独自の自社製バニシングリーマを使用し、精密かつ安定した仕上げを実現しました。また、長手方向の深穴加工にも専用工具を用いることで、高い精度を保ちながら対応しています。
マニホールドブロックのことなら宮本製作所にお任せください!
マニホールドブロックは、油圧システムの効率化、軽量化、省スペース化に大きく貢献する重要な部品です。特に、アルミダイカスト製のマニホールドブロックは、複雑形状の成形を容易にし、コスト削減や製造リードタイムの短縮を実現します。
宮本製作所では、お客様のご要望に応じた油圧システムにおける高精度な加工やバリ取り、ポンプ組立で得た宮本製作所の技術的知見に基づくカスタム提案や高い品質保証を行い、少量試作から大量生産まで対応可能な体制を整えています。
焼結金属加工.comを運営する株式会社宮本製作所では、国内の主要大手メーカ―様にご依頼いただき、特注マニホールドブロックの製造を多数行っております。油圧機器や車両向けのマニホールドブロックの導入を検討されている方は、ぜひ宮本製作所にご相談ください。