油圧ポンプとは?構造から種類、構成部品の加工ポイントまで解説!
油圧ポンプは、液体である油に圧力をかけ、産業機械や建設機械などで必要とされる大きな力を生み出す装置です。その基本的な役割は、エンジンやモーターの回転エネルギーを油圧エネルギーに変換し、油圧装置に力と速度を供給することにあります。
この記事では、油圧ポンプの仕組み、主な種類、使用される分野について解説するとともに、加工のポイントや材質に注目して、そのメリットと特徴を紹介します。
油圧ポンプとは?
油圧ポンプは、液体である油に圧力をかけて流体エネルギーを抽出するポンプであり、油圧装置の一部です。油圧ポンプでは、油(作動油)に圧力をかけ、吸入した油を吐出することで圧力と流量の流体エネルギーを発生させます。これによって、油圧装置のアクチュエータ(シリンダー、油圧モーター)に力と速度を供給する役割を果たします。つまり油圧ポンプは、タンクから油を吸い込んで送り出す装置であり、エンジンやモーターの機械的な運動(回転)エネルギーを油圧の流体エネルギーに変換するという仕組みで動作します。
油圧ポンプは「密閉された容器の中で静止した流体の一部に圧力を加えると、その圧力は流体のすべての部分に等しく伝わる」というパスカルの原理を利用して力を変換しています。そのため油圧ポンプを含む油圧装置を用いることで、エンジンやモーターでかけた力よりも大きなエネルギーを生み出すことができるのです。
また油圧ポンプが含まれる油圧機器ユニットは、
- 油圧アクチュエータ
- 油圧ポンプ
- 油圧バルブ
- オイルタンク
- 接続部品
- アタッチメント
という要素から構成されます。そしてメインの油圧システムは、上3つの要素から構成されます。
油圧ポンプで加圧された油は、油圧バルブにて圧力や流量、流れる方向が制御され、油圧アクチュエータで動作します。油圧シリンダーであれば、ピストンに固定された棒の前後運動に、油圧モーターであれば回転運動に、それぞれ変換されます。
また、油圧以外にも水圧や空圧などの圧力形式がありますが、油圧ポンプは、
- 水と比較して粘性があり漏れにくい
- 沸騰しない
- 潤滑性がある
- 耐摩耗性が高い
- 錆を起こしにくい
という油ならではのメリットがあり、水や空気と比較して高い圧力をかけることができ、様々な分野で油圧ポンプは使用されます。
油圧ポンプが使用される分野としては、産業機器やプレス機、建設機械、パワーステアリング、フォークリフト、農業機械、製鉄機械、船舶用機械など、特に大きな力が必要とされる分野で多用されています。
油圧ポンプの種類
油圧ポンプは、様々な切り口から色々な種類に分類されます。
まず油圧ポンプの吐出量が調整できるかどうかという点から、調整ができず一定の吐出量である固定容量形油圧ポンプと、調整可能な可変容量形油圧ポンプに分類されます。
また油圧ポンプは、容積ポンプの作動方法から、回転式と往復式の2種類に分類されます。
そして機構的な観点からは、油圧ポンプは主に下記の3種類が挙げられます。
ギアポンプ(歯車ポンプ)
ギアポンプは、歯車が回転することで油に圧力をかけて送り出すポンプです。ギアポンプでは、歯車が回転することによって、ケーシングとのすきまが変化し、作動油に圧力をかけて送り出します。
内接形と外接形の2種類があり、どちらも構造が単純でゴミに強く、比較的安価ですが、内接歯車型の方がよりコンパクトな設計となっています。ギアポンプは可変容量には対応しておらず、定吐出量形が一般的です。ギアポンプはシンプルな構造のためコンパクトな一方で吸込能力が最も高く、パワーステアリングや小型機械の動力源としてよく使用されます。
ベーンポンプ
ベーンポンプは、ケーシング内に回転子が偏心して取り付けられ、ベーンと呼ばれる羽根が回転しながら油を閉じ込め、偏心によって容積が変化し圧油を吐出するポンプです。ローターを回転させると、ベーンが遠心力と油圧で張り出し、カムリング内面に接して摺動し、ベーンとカムリングの空間で油を吸込み・吐出します。
ベーンポンプは長寿命で脈動が少なく、騒音が低く安定した性能を持ち、保守も容易です。しかし、ベーン(羽根)は壊れやすいというデメリットもあります。ベーンポンプには可変容量型と定吐出形の2つのタイプがあり、比較的低圧領域に適しています。
ピストンポンプ
ピストンポンプは、回転するシリンダブロック内のピストンの往復運動によって油を吐出する油圧ポンプで、プランジャーポンプとも呼ばれます。ピストンポンプには、大きく
- アキシアルピストンポンプ(ピストンの作動方向が軸とほぼ平行、斜板式と斜軸式に分類される)
- ラジアルピストンポンプ(作動方向が軸の中心から外に向かう)
- レシプロピストンポンプ
という3つのタイプがあります。これらのポンプは、シリンダボア内に挿入されたピストンが傾斜したプレートの面の上を摺動しながら往復運動を起こし、油を吐出します。ピストンポンプは密閉性が高く、高圧時の漏れが少なく、高圧環境での使用に適していますが、構造が複雑でコストがかかるというデメリットもあります。
その他にも、スクリューポンプなどの種類がありますが、いずれの油圧ポンプも作動油を昇圧することに変わりはありません。
油圧ポンプの材質にダイカストや鋳物が使われる理由とは?
油圧ポンプの共通点として、作動油の昇圧という目的ゆえに、大きな力が必要となることから、油圧ポンプを構成する部品には一定の強度が求められます。そのため油圧ポンプ部品の材質には、おもにアルミダイカスト(アルミ鋳物)や鋳鉄が主に使用されます。
鋳鉄は、特に建機のような大型装置・機械向けに採用されることが多いです。これは、鋳鉄の耐久性や強度が使用用途にマッチしているためです。しかしデメリットとしては、鋳鉄にはメッキが必要になる点が挙げられます。また重量もあり、追加工が必要であっても削りづらいという点もデメリットとして挙げられます。
一方でアルミダイカストは、アルミのため軽く、錆びにくく、削りやすく、その上でコスト的にも安いという大きなメリットがあります。現在は、小型化と軽量化という大きな時流があり、特に産業機械や医療分野ではこの2点が求められます。そのため油圧ポンプに使用される部品の材質も、アルミダイカストが多くなります。
また当社でご相談が多いギヤポンプについては、ギヤが摺動するとケースが削れてしまいますが、この摺動による摩耗がギヤとケースの馴染みにもつながるため、結果的に品質向上につながるとされています。そのため当社では、現在アルミダイカスト製のギヤポンプに関するご相談が多くなっています。
油圧ポンプ部品の加工ポイント
油圧ポンプ(ギヤポンプ)部品の加工は、基本的にギヤ側とモーター側に分かれます。
ギヤ側については、ギヤポンプの要でもあるギヤを組み込む箇所になるため、寸法公差、幾何公差ともに高精度な加工を要求されます。特にギヤとシャフトで構成される部品を組み込むため、穴径と同軸度と呼ばれる幾何公差についてはミクロン台の精度を実現する必要があります。
一方モーター側に関しては、モーター組込のための形状を加工するために、CNC旋盤等を用いて加工しますが、こちらもギヤ側と同様に穴径と同軸度については高精度な要求があります。
その他、バルブ類を組み込むための高精度な横穴等、穴径の精度を確保することが油圧ポンプ部品加工の要となります。
株式会社宮本製作所では、複数穴加工のための特殊形状ドリルの自社製作も行っており、焼結加工されたアルミダイカスト製の油圧ポンプ部品への追加工が必要な試作や開発時であっても、納期短縮を図ることができます。また追加工の加工機についても、油圧ポンプ部品加工に特化したマシニングセンタやNC旋盤、研磨機等を保有しております。
また当社では、油圧ポンプに組み込むための焼結ギヤや、その他の構成部品まで含めて、基本的にはすべて社内で製作を行っております。ページ末尾では当社の製作事例もご紹介しておりますが、当社では特殊なマニホールドブロック加工にも対応しております。
油圧ポンプの組立・検査
油圧ポンプ部品の加工を行った後は、それぞれの部品を組み立ててポンプ自体を製作していきます。油圧ポンプ(ギヤポンプ)の組立は、加工完了した部品のバリや汚れの確認から始まります。組付け時に切粉等の付着があると、油漏れ等の原因となります。そのため油圧ポンプを製作する上で、この組立工程は特に重要な工程となります。
その後、ギヤやシャフトなどの構成部品のアッセンブリーを行い、組立を行います。最後に組み立てた油圧ポンプのリーク試験やトルク試験などを行い、全数性能確認まで行います。
株式会社宮本製作所では、加工から組み立てまで一貫して生産する体制を保有しております。油圧ポンプ部門では、10個~1000個までの少量多品種生産にも柔軟に対応してまいります。
【油圧ポンプ部品の事例紹介】
続いて、実際に当社で製作した油圧ポンプ部品の事例をご紹介いたします。
焼結金属(鉄系) 油圧ポンプ用ベーン
この焼結金属加工製のベーンは、油圧ポンプに使用されるベーンです。このベーンは複雑形状・異形状をした焼結金属品であるため、同軸度、直角度の精度出しがシビアです。また、複数の穴あけ加工を行うので、穴あけの位置度の精度出しも高い技量が必要となります。
また、仕上げ加工として、研磨は外径と端面とベーンの幅の3箇所を同時加工しています。同時加工を行うことで、ワンチャックにて研磨作業を行い、同軸度、直角度、円筒度のずれを防止しています。
アルミダイカスト 偏心型油圧ポンプケース
この油圧ポンプ用のケースはアルミのダイカストにて成形したものです。
薄肉の偏心加工であるので、加工中の変形に注意が必要です。ダイカストにて成形を行っているため、ソリッドやブロックからの削り出しに比べて歩留りがよく、ローコストでの加工・製作が可能となります。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径と外周を旋盤にて加工し、穴あけをマシニングにて加工を行っています。
油圧ポンプは旋盤加工で行う内径・外径の偏心に注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース②
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法としては、マシニングにて6面加工を行っています。
ギヤ挿入部やシャフト挿入部など精度を要求される箇所に関しましては、専用工具を社内で内製化するなど短納期にも対応可能です。油溝などの特殊な形状も工具や加工プログラムを調整し対応することが可能です。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース③
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法としては、マシニングにて6面加工を行っています。
ギヤ挿入部やシャフト挿入部など精度を要求される箇所に関しましては、専用工具を社内で内製化するなど短納期にも対応可能です。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース④
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法としては、マシニングにて6面加工を行っています。
ギヤ挿入部やシャフト挿入部など精度を要求される箇所に関しましては、専用工具を社内で内製化するなど短納期にも対応可能です。オイル―シール部分や油溝などの特殊な形状も工具や加工プログラムを調整し対応することが可能です。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース⑤
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径と外周を旋盤にて加工し、穴あけをマシニングにて加工を行っています。 油圧ポンプは旋盤加工で行う内径・外径の偏心に注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース⑥
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径・外径を旋盤にて加工し、マシニングにて6面加工を行っています。
油圧ポンプは旋盤加工で行う内径が外径に対して偏心しているため、注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース⑦
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径を旋盤にて加工し、マシニングにて6面加工を行っています。
油圧ポンプは旋盤加工で行う内径が外径に対して偏心しているため、注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 6面加工油圧ポンプケース⑧
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径を旋盤にて加工し、穴あけをマシニングにて加工を行っています。
油圧ポンプは旋盤加工で行う内径が外径に対して偏心しているため、注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 トラック荷台向け油圧ポンプケース
このアルミダイカスト製の油圧ポンプケースは、トラック荷台の油圧装置の油圧ポンプに使用される機械加工品です。この油圧ポンプ部品の中にギアやプレッシャープレート、シャフトなどの構造部品を内蔵して使用するため、高い内径の加工精度が必要となります。旋盤加工、マシニング加工にて油圧ポンプの加工を行うのですが、旋盤加工で内径の精度出しを行っています。
アルミダイカスト製 円柱型油圧ポンプケース
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法として内径と外周を旋盤にて加工し、穴あけをマシニングにて加工を行っています。
油圧ポンプは旋盤加工で行う内径・外径の偏心に注意が必要です。専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。
アルミダイカスト製 円柱型油圧ポンプケース②
この油圧ポンプのケースは、アルミソリッド(柱体)からの削り出しで加工を行った試作加工品です。加工方法として内径と外周、外周溝を旋盤にて加工し、穴あけや異形状部分をマシニングにて加工を行っています。
本製品は旋盤加工で行う内径・外径の偏心量が非常に大きく、専用の特殊治具を社内で内製化し、位置ズレが起こらないように固定してから旋盤加工することで、高い精度の加工を行っています。また、異形状部分の加工もCADや3Dデータを御支給頂ければ、同様の加工を対応可能です。
アルミダイカスト製 マニホールドブロック
この製品は、アルミソリッド(ブロック)からの削り出しで加工を行った機械加工品です。加工方法としてマシニングにて6面加工を行っております。
段付き穴が非常に高精度な製品となっておりますが、専用の特殊工具を社内で内製化し、同軸度や穴径を確保しながらの加工を行っている製品となっております。
油圧ポンプ部品のことなら宮本製作所にお任せ!
油圧ポンプは、エンジンやモーターの回転エネルギーを活かして、油に圧力を加え、産業機器や建設機械など多岐にわたる分野で重要な役割を果たす装置です。パスカルの原理を応用し、大きな力を効率よく伝達する油圧ポンプは、特に高圧が求められる環境で活用されています。
油圧ポンプには、ギアポンプ、ベーンポンプ、ピストンポンプの3つの主要なタイプがあり、それぞれの特徴に応じて様々な用途で使用されています。さらに、材質には耐久性のある鋳鉄や、軽量かつ錆びにくいアルミダイカストが採用され、特に現代の小型化・軽量化のトレンドに合致しています。
株式会社宮本製作所では、これらの油圧ポンプに必要な部品の精密加工から組立、検査までを一貫して対応しており、高精度な製品を提供しています。特に、アルミダイカスト製品に関しては、短納期と高精度を両立した加工技術を持ち、ギアポンプや油圧システム部品など、複雑形状の製品にも柔軟に対応可能です。
油圧ポンプやその部品の製作に関してお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門的なアドバイスから加工・製作に至るまで、幅広くサポートいたします。